投稿をご覧頂きありがとうございます。大分駅前整体院の河野です。今回は「昔の肉離れは治った?今の筋力と動作を確認」という内容になります。
学生時代にサッカーや野球、陸上などをしていて太ももの裏を肉離れしたものの、「痛みがなくなったから、そのまま競技に戻った」という経験はありませんか?
それから何年も経ち、久しぶりにスポーツを始めたときに「以前より走りにくい」「片脚だけ力が入りにくい」「ダッシュや切り返しが怖い」と感じても、昔の肉離れとは結びつけて考えていない方もいると思います。
今回から全4回に分けて、学生時代や若い頃に経験したスポーツ外傷・スポーツ障害と、現在の身体の動きについて考えていきます。
第1回は「肉離れ」です。
肉離れというと、痛みがなくなれば「治った」と考えやすいケガですが、スポーツをする身体として考えると、それだけでは判断できない部分があります。
痛みがないことと、以前と同じように走る・止まる・切り返すための機能が戻っていることは、必ずしも同じではありません。
今回は、過去の肉離れを必要以上に心配するのではなく、現在の身体を見るときに何を確認したいのか、近年の論文や研究も参考にしながら当院の考えを説明します。
1.痛みがなくなれば肉離れは治ったと言える?

歩けることと、加速・減速・切り返しなどのスポーツ動作ができることは分けて考えることが大切です。
肉離れをした直後は、歩く、階段を上る、膝を曲げ伸ばしするといった動作でも痛みを感じることがあります。そのため、時間の経過とともに日常生活で痛みを感じなくなると、「もう治った」と考えるのは自然なことです。
しかし、ここで一度分けて考えておきたいのが、「日常生活ができる状態」と「スポーツに必要な動きができる状態」には違いがあるということです。
日常生活とスポーツでは筋肉に求められるものが違う
普通に歩けるようになっても、全力に近い速度で走るときには、筋肉に加わる力や動く速さが大きく変わります。
例えば、車で考えると分かりやすいかもしれません。街中をゆっくり走れるからといって、高速道路での加速や急な減速、曲がる動きまで同じように問題なくできるとは限りません。
身体も同じです。
歩ける、軽く走れる、全力に近い速度で走れる、急に止まれる、方向を変えられる。このそれぞれで身体に求められる能力は異なります。
2026年に発表されたハムストリング損傷後の競技復帰に関する報告でも、競技復帰を判断するときには痛みだけでなく、筋力、可動域、本人の準備状態など複数の項目が用いられています。
そのため、昔の肉離れを振り返る場合も、「今は痛くないから大丈夫」という一つの基準だけではなく、現在どの程度の動きまでできているのかを確認することが大切だと考えています。
2.昔の肉離れは現在の身体と関係する?

昔の肉離れを原因と決めつけず、現在の筋力や可動域、動作を確認するための一つの情報として考えます。
「肉離れしたのは10年以上前だから、今の身体には関係ないのでは?」
このように考える方も多いと思います。もちろん、昔の肉離れが現在感じている不調や動きにくさの原因だと、そのまま結びつけることはできません。
一方で、過去の肉離れを完全に切り離して考えるのも適切ではありません。
過去の肉離れは一つの確認材料になる
2020年に発表されたハムストリング損傷のリスク因子についての報告では、71,324人のアスリートを含む78研究が検討され、過去のハムストリング損傷歴は、その後のハムストリング損傷と関連する重要な因子の一つと報告されています。
ただし、これは「昔肉離れをした人は必ず再発する」という意味ではありません。
肉離れには年齢、筋力、スポーツの種類、走る量や速度、これまでのケガなど、さまざまな条件が関係します。研究でもハムストリング損傷は多因子的に考える必要があるとされています。
だからこそ大切なのは、昔のケガを怖がることではなく、「以前どこを痛めたのか」という情報を、現在の身体を確認する材料の一つとして使うことです。
3.柔らかくなっていても筋力まで戻っているとは限らない

ストレッチで動かせる範囲だけでなく、その範囲で力を発揮し動きをコントロールできるかも確認します。
肉離れの後に「筋肉が硬くなった気がする」と感じ、ストレッチを続けている方もいます。
もちろん柔軟性を確認することは大切ですが、肉離れ後の状態を柔らかさだけで判断しないことも重要です。
ストレッチだけでは分からない部分がある
ハムストリング損傷後の筋力と柔軟性を調べた報告では、受傷後にみられた柔軟性などの差は時間とともに小さくなる一方、競技復帰後にも一部の動的な筋力指標で差が残っていたことが報告されています。
つまり、
「前屈できるようになった」
「左右同じくらい伸ばせる」
「ストレッチしても痛くない」
という状態だけで、スポーツで必要になる筋力まで十分に確認できるわけではありません。
走っているとき、ハムストリングはただ伸び縮みしているだけではなく、速い動きの中で力を発揮したり、脚の動きをコントロールしたりします。
「どれくらい伸びるか」と「その範囲でどれくらい力を発揮できるか」は、分けて確認したいポイントです。
昔の肉離れが気になる場合も、ストレッチを増やすことだけを考えるのではなく、現在の筋力や実際の動作まで確認する必要があります。
4.肉離れした筋肉だけを見ればいいわけではない

走る動作ではハムストリングだけでなく、体幹・骨盤・股関節・膝・足首などが協調して動きます。
太ももの裏を肉離れした経験があると、どうしてもハムストリングそのものに意識が向きます。
しかし、実際にスポーツをするときはハムストリングだけで身体を動かしているわけではありません。
走る動作は身体全体でつくられる
例えば走る場面を考えてみましょう。
地面に足をつき、足首や膝が動き、股関節が曲がったり伸びたりしながら、骨盤や体幹も動いて前へ進みます。その中の一部分としてハムストリングが働いています。
2023年にBritish Journal of Sports Medicineに掲載されたハムストリング損傷に関する国際コンセンサスでも、リハビリテーションでは下肢全体やkinetic chain(運動連鎖)を評価することの重要性について専門家の高い合意が得られています。
ただし、「骨盤がずれているから肉離れした」「股関節が硬いから再発する」というように、一つの場所だけを原因として考えるものではありません。
股関節、膝、足首、骨盤、体幹などが、その人のスポーツ動作の中でどのように協調しているかを見ることが重要です。
大分駅前整体院でも、昔肉離れをした場所だけを見るのではなく、現在の立ち方や歩き方、片脚での動き、股関節や膝の動きなどを含めて身体全体を確認しています。
5.「走れる」の中にもいくつもの段階がある

「走れる」だけでなく、速度を上げる、止まる、方向を変えるなど、スポーツで必要になる動作も確認します。
「今でも走れるので、昔の肉離れは大丈夫だと思います」
このように話される方もいます。
ここで確認したいのが、どのくらいの速さで、どのような走り方ができているのかです。
ジョギングと全力に近い走りは同じではない
ゆっくりしたジョギングでは問題がなくても、速度を上げたときに左右差を感じたり、以前肉離れした側で地面を押しにくかったりする場合があります。
さらにスポーツでは、一定速度で真っすぐ走るだけではありません。
走り始める「加速」、速度を落とす「減速」、そこから反対方向へ動く「切り返し」など、状況に合わせて身体を素早く変化させる必要があります。
国際コンセンサスでも、ハムストリング損傷後のリハビリテーションではランニングやスプリントが重要な構成要素とされ、競技復帰前には競技で要求される能力や負荷を考える必要があるとされています。
そのため、
歩ける
↓
ジョギングできる
↓
速度を上げられる
↓
加速・減速できる
↓
切り返せる
↓
競技特有の動作ができる
というように、段階を分けて考えると現在の状態が分かりやすくなります。
「走れるか」ではなく、「自分のスポーツに必要な走り方ができるか」まで見ることがポイントです。
6.競技が違えば確認したい動作も変わる

同じ「走る」動作でも、競技によって加速・減速・切り返し・移動方向など求められる能力は異なります。
同じ太ももの裏の肉離れでも、その人が行うスポーツによって身体に求められる動きは違います。
そのため、最終的には筋力や柔軟性だけでなく、その競技で実際に使う動作に近づけて確認する必要があります。
サッカーと野球では身体の使い方が違う
例えばサッカーなら、ダッシュした直後に急減速して方向を変えたり、片脚でボールを蹴ったりします。
野球では走塁で急加速する場面がありますし、テニスやバドミントンなら前後左右への細かな切り返しが繰り返されます。陸上競技でも、短距離走と長距離走では求められる能力が同じではありません。
2024年の競技復帰に関する報告では、ハムストリング損傷後の評価項目は、大きく臨床的な評価・筋力・パフォーマンスに分類されています。また2026年の報告でも、痛みや筋力だけでなく、可動域や競技に関連した動作など複数の要素を組み合わせる考え方が示されています。
つまり、左右の筋力を測って「同じくらいだから大丈夫」で終わるのではなく、その先にある実際のスポーツで必要な動きを身体が行えるかを見ることが大切になります。
これは学生だけの話ではありません。
学生時代にスポーツをしていた40代・50代の方が、久しぶりにフットサルやテニス、ランニング、ゴルフなどを再開する場合も、昔と現在では運動量や筋力、身体の使い方が変化している可能性があります。
昔できていた動きを、現在の身体が同じように行えるとは限りません。
7.昔の肉離れほど「今の身体」を確認する

過去の肉離れだけで判断せず、現在の痛み・可動域・筋力・全身の連動・スポーツ動作を合わせて確認します。
昔の肉離れについて考えるときに重要なのは、「昔のケガが悪かった」と過去だけを見ることではありません。
むしろ確認したいのは、ケガから何年も経過した現在、身体がどのように動いているかです。
過去のケガと現在の機能をつなげて考える
肉離れした場所に今も痛みがあるのか。股関節や膝は動いているのか。左右で筋力に大きな違いはないか。ジョギングから速度を上げても動けるのか。止まる、切り返す、ジャンプするなど、その競技に必要な動作ができるのか。
こうした複数の情報を合わせて見ることで、「昔肉離れをした」という過去の情報だけでは分からなかった現在の身体の特徴が見えてくることがあります。
2026年に発表された競技復帰基準についての報告でも、痛みだけを基準にするのではなく、筋力、柔軟性、機能的なテスト、スポーツ特有の動作などを組み合わせて評価することが推奨されています。
一方で、競技復帰については「この数値になれば絶対に再発しない」という一つの基準が確立されているわけではありません。国際コンセンサスでも、選手本人、競技の要求、損傷した筋肉、ケガの程度などに合わせて個別に考える必要性が示されています。
だからこそ大分駅前整体院では、昔の肉離れが現在の症状や動作の原因だと決めつけるのではなく、過去のケガを一つの情報として、今の身体の状態と照らし合わせることが大切だと考えています。
「学生時代に肉離れをしたけれど、ちゃんとリハビリした記憶がない」
「痛みがなくなったので、そのまま部活に戻った」
「最近またスポーツを始めたら、以前と同じ側の脚に違和感がある」
「走れるけれど、ダッシュや切り返しになると左右差を感じる」
このような場合は、昔のケガだけに目を向けるのではなく、現在の筋力・可動域・身体全体の連動、そして実際のスポーツ動作まで一度確認してみることが、これからスポーツを続けていくうえでの一つの判断材料になります。
今回は全4回のスポーツ外傷・スポーツ障害シリーズ第1回として「昔の肉離れ」を取り上げました。
次回以降も、学生時代や若い頃に経験したケガを単なる「古傷」として扱うのではなく、現在の身体の動きとどのように照らし合わせて考えればよいのかをお伝えしていきます。
大分駅前整体院では、これまでのケガの経緯だけで判断するのではなく、現在の身体の状態や実際の動作を確認することを大切にしています。今回ご紹介した論文や研究も参考にしながら、昔の肉離れが気になっている方ほど、過去だけではなく「今、身体がどこまで動けているのか」を見ることが大切だと考えています。


